暮らしのエッセイ
***ハンマームへ行こう***
そういえば、ハンマームの話をしていなかったので、その話をしよう。欧米人が嫌がる、ハンマームだ。
日本人はハンマームに抵抗を持たない。裸の付き合いなんて、日本じゃよくある話だからだ。そう、ハンマームはアラブ式銭湯みたいなものだ。違うのは、日本の風呂のように湯船に浸かるわけではないということ。アラブのハンマームは基本的にサウナ式だ。区切られていない部屋が奥へ奥へと連なる、団子のようなものだと思ってもらったらいい。形は完全ドーム型というわけではないが、入り口から遠い部屋ほど熱くなった熱気がこもっている。もちろん、器用に縦に並んでいるわけではないけど。
ハンマームに行く前に、用意するもの:
垢擦り(垢擦りをやってもらうなら必須)、タオル、何はなくともパンツの替え、シャンプーや石鹸の類、お湯汲みのコップや洗面器(貸し出しもある)、その他の着替えはご随意に。(泥を買ってお湯で溶いておき、それを最後に石鹸やシャンプーとして使うことも、現地の人はする)
テュニジアでは垢擦りタオル(というのかな?)は1DTで手に入る。でもすぐに破けるから、1.5DTくらいの丈夫なのを買った方がいい。色は蛍光ピンクか蛍光グリーン。それ以外のものは垢擦り用ではない。この垢擦り用タオル、テュニジア方言では「ケェス」という。コップのことも同じような発音をするが、どうも微妙に違うらしい、違いを聞き分けられなかった。
ハンマームは、場所によっては、男専用であったり、午前中が男・午後が女といった時間制であったりする。これはよく確かめてからでないといけない。そして、勿論場所によってえらく汚かったりキレイだったりする。
テュニスで一番キレイだと有名?なのは、イラク通りのハンマームだ。イラク通りは短いので、歩けばすぐに分かる。ハンマームの目印は、ラマダーン・ランプとか言われる綺麗な細工のランプであったり、赤と緑と白のストライプの入った入り口のアーチであったりするが、一番確実なのは壁だ。中が蒸気でいっぱいなので、外の壁がはげてくる。しーろい、はげたボロボロになった壁があったら、それがハンマームというわけ。
でも、イラク通りのハンマームは表は脱衣所に面しているので、はげていない。入り口に長いのれんがかかっている。
私の知っているハンマームで一番外観が楽しいのは、狛犬の如く2頭のライオンの像が構えていたシディ・バハリのハンマームだ。これはテュニスのLondresロンドン通りの近くにある。ここの壁は見事にはげているケド・・・。では、ハンマームに入ってみよう。
始まりの時間に行くと、空いているしお湯もたっぷりあるからお薦めだ。お金のシステムはそのハンマームによっても違うが、最初の入場料は入り口で支払う。これはおおよそ1DT。また値上がりしている可能性もあるけど。
脱衣場で、そこの荷物を管理する人に対するチップも必要だ。これは、ハンマームによっては受付の人が兼任するので、入場料に含まれていることもある。チップといっても値段が決まっている。少なくて100ミリームくらいからだが、大体300ミリームで収まると思う(値上がりしてなければ)。この数字は2000年3月の数字と思ってもらえたらいい。で、このチップも最初に払う場合(払ったというチケットをくれることも)と、後払いとがある。
この脱衣場もいろいろで、一段高くなったところにゴザが敷いてあるのだが、砂まみれのところ、ボックスがついてるところ、いろいろだ。入場料とチップだけかと思いきや、他のオプションをプラスしたいなら、その料金も払わないといけない。せっかくだから、垢擦りもしてもらおう。
垢擦りを頼みたかったら、受付で「ハッカ」(アラビア語)と言ってみよう。身体をこする真似でもすれば、すぐに分かってくれて「じゃあ、いくらね」と言ってくれる。これも1から1.5DTくらいはする。数字が分からなかったら料金表を見せてくれるか、指で示してくれるから心配要らない。(郊外になると、垢擦りのおまけにシャンプーもしてくれるところがあるようだ)さて、垢擦りを頼んでお金を払ってしまったら、さっさと入りましょう。脱衣場で服を脱いだら、まとめて置いておき、バケツとトマト缶を確保しよう。このトマト缶は(トマトの缶しか見たことないけど、他のもあるかも)身体にお湯をかけるときに使う。バケツは洗面器代わりだ。一人でいくつもいくつも確保しておくと便利だ。
個室のあるハンマームなら、さっさと個室を確保してしまおう。自分が入り込んで扉を閉めてしまえばいい(鍵はかからない)。そうしたらそこの蛇口からお湯は取り放題。いちいち汲みにいかなくていい。
個室が取れなかったり、はじめからない場合、どこのハンマームも一段高くなったところに座って、身体を洗う。奥に行けば行くほど熱いのは前述したとおりなので、自分の好みの部屋まで行けばいい。
まずはバケツを持ってお湯を汲みにいこう。蛇口へ向かうか、お湯溜めに行こう。お湯を汲んで、お水の蛇口をひねって温度を調節しよう。あとは自分で身体を洗いながら、垢擦りの担当の人が来るのを待とう。担当者が自分を呼びにきたら、一段高くなったところに寝転がれと指示される(この間個室は、自分の荷物を置いておけば取られることはない)。自分の垢擦りを担当者に渡そう。持っていないときや、不適当なものを渡すと、担当者が自前の者を持ってくる。
さて、始まると、背中からごしっごしっと力強くこすられ、「ひぃぃぃ」と声をあげてしまうかもしれない。垢がたくさんとれるのが分かるはずだ。背中が終わればお腹(ひっくり返れと指示される)、お腹が終われば、座れと指示され、腕や肩を念入りにこすられ、喉や顔までしっかりこすられる。そして、最後にざばっとお湯をかけられ、「サヴァ(OK)」と言われたらおしまいだ。あとは好きなように身体を洗い、髪を洗って脱衣場に戻ればいい。
中で現地の人に話しかけられたり、シャンプー貸してとか言われたりすることもある。また脱衣場で、ハンマームの職員が火鉢などを出して食事をしていたいすると、食べろと勧められることもある。きっと珍しいことを経験すると思う。
女だったら、「色が白いわねー」とか「髪が黒いなー」とか言われて触られることもしばしば。男だったら下ネタ談義とかをするのかもしれない・・・。よくあるのは脱衣場で「今何時?」というやつだろうか。
何にせよ、裸の付き合いは、普段見えなかったものが見えそうで、楽しいものだ。でも、垢擦りは一ヶ月に一回くらいにした方がいいと思うな。やりすぎると肌が傷みそうだから・・・・。