南仏旅行の記録 クリスマスは終わらない


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 私の部屋に荷物を置いて、マルセイユの町を歩くことにした。今日の私の目的はブイヤベースだ。マルセイユはそれだけのために来たと言っても過言ではない。

25日は終わったというのに、クリスマスはまだ続いているらしい。マルセイユの街角で見つけた人形市。大きさは様々で、モチーフはノートルダムでも見た「イエス生誕」。それを囲むためののどかな風景も完備。家とか買ったら300FFとかするし、一番小さいサイズの人形でも25FFはした。

 どこかのカフェにでも入って朝食でも・・と思っていたのだが、根っからの貧乏性、カフェの前のメニューを見た段階で入るのをためらってしまう。おかげで気が付けば昼に近くなっていて、「もう朝食なんていいや」となってしまったのだった。ほんとに色々楽しみたいときは、貧乏性は敵以外の何物でもない!

 明日の月曜日は美術館も休みになるので、今日のうちに何か見ようと思って、マルセイユの歴史博物館に行ってみた。アラブ人が渡ってきた過程が分かるとか。それは見に行かなくては。・・・しかし、なぜか入り口らしきところは閉まっていた。どうしてーぇ? クリスマスは終わったんじゃないのー?

 しくしくしく。

 それで仕方がないから、マルセイユの海洋博物館とやらに入ってみた。けどもこれはハズレだったねぇ。船の模型がやたらとあり、そして貿易国の案内とか、モロッコの地図やセネガルのポスター・・・、潜水服のいろいろ・・・、しかし、解説があるわけじゃなく、タイトルがついてるだけだったりして、意味不明。まったく、あそこは観光客の行くところじゃない。マルセイユの港の昔の姿の絵なんかは、うん、分かるんだけどねぇ。
 そして、展覧会場があって、そこは某・なにがしさんの絵がいくつもあった。その絵はよかったのよ。でもね、どう考えても同一人物が描いたと思えないのだ。手法も違えば色使いも違う、技術も違う。そういうのが2種類や3種類なら転向したんだなと思えるけど、そうじゃないんだもん。ほんとにあれは同一人物のものなのか? けど、展覧会のタイトルは一人の名前だったしなぁ。

マルセイユの旧港。朝はこうやって魚市がたっていた。いかにも獲ってきたばかり! 船にはまだエンジンが掛かってたりね。モナコの海洋博物館で見た魚もいたりして、おーこいつは!・・・みたいな(笑)

 さて、お昼を食べる場所は昨夜のうちに目を付けていたので、迷うことはなかった。連れが食べた70FFのブイヤベースはイマイチだった・・というので、じゃあ別の店の75FFを試そうと・・・(え、変わらないって? だって高いんだよ、ブイヤベース・・・)

 店に入ると、何やらすんごい暑い席に通された。真上からと真横から、やたらと暑いストーブが吹き付ける。私はブイヤベースを頼み、出てきた物を食べていくのだが(ごめんね、写真を撮るのをすっかり忘れてたのだ)、前述したように私は右手首を痛めていて、思うような角度でナイフが使えない。しかも、拳程度の大きさのカニが、まるごと皿の上に乗っているのだ。こーれーをっ、どうやって食べろというのーぉ??

 ブイヤベースというのは、漁師の料理。捕ってきた魚とかをごった煮したもの、と思ってもらったらいい。で、カリカリのフランスパンが添えられるので、それにアイオリとかルイユとうソースをつけ、更にそのパンを皿のスープに浸して食べるのだそうな。アイオリっていうのは、ニンニク・マヨネーズソースって感じで、生のニンニクの香りがつーんとする。ルイユはサフランとか唐辛子が入ってるので朱色っぽい色が付いている。

 けども、この店の味が口に合わないのか、はたまた頭の上の暖房が暑くて頭がいかれてたのか、スープの方はさっぱり。ほんとにごった煮なんだけど、中のジャガイモが一番おいしかったわ。魚はおいしいし、嬉しかったんだけど、このスープがどうもいけない。それで、カリカリのパンもルイユに付けて食べるだけの方がおいしかった。カリカリのフランスパン、よいですねぇ。ちょっと辛目のルイユがまたいけました。

 結局カニを食べることを諦めた私は、フランスに来て初めてチップというものを支払い、店を後にした。給仕さんはチップを待っているんだものね。私としてはこの席に案内した奴にチップを渡さないで去りたかったのだが、最初に案内した人と給仕してくれた人が違うものだから・・・ああ、もう! (一度座ってからだと、席替えてって言えなくて・・・)

 さてさて、連れは昼食でフランスフランを使い果たしてしまったので、あとはお金の掛からないところに行くことになった。
 ・・・お金の掛からないところ。地図を見て、うん、ここなら!ってところに向かう。
 それは、ファロ公園。パレ・デュ・ファロっていう建物があってね(パレスってことなのだが、そういうイメージなかったから宮殿とは訳さない)、その周りに公園があるのだ。凹型をした旧港の、出っ張り部分に当たるので、景色がいいだろうと思って。

 公園まで来ると、朝方からくしゃみばっかりしていたのが止まって、なんだかいい気分。それに、市民の憩いの場って感じでベンチや滑り台、砂場まであったりする。ど、どういう公園なの、ここは?

 これが、パレ・デュ・ファロ。ね、宮殿って訳したくないでしょ。
修復中というのは分かるけど、真ん中にあるのは「絵」。元のものそのままの絵なのだ。工事のときとかによく使われるカバーがあるでしょ、あれに描かれた絵なのね。で、近づいていってみると、真ん中の扉の部分、ちゃんと開けられるように切り込みが入ってた。けど、「扉は閉まっている」ので、紐でくくりつけて「閉めて」あったよ・・

 とてもお茶目なフランス!と思ったら、あとで、イタリアを旅行してきた友人に「イタリアにもあったよー」と言われた。日本は工事中なんかに拘らないものねー。

 ここからは丘の上のノートルダムも綺麗に見えた。旧港も、新港も、しっかり見渡せる。どこも開いてないクリスマスのときは、穴場だねーと思った。

 そのあと、近くのサン・ニコラ要塞とやらを覗きに行ったけど、なーんもなかった。2次大戦で戦死した人のための碑があったのと、立入禁止の看板を見ただけ。眺めもファロ公園の方がよかったしねぇ。

 で、また歩いて旧港まで戻ってくると・・・・途端にぶり返すくしゃみ(咳?)。なんだなんだ? こっちの方は空気が悪いのかしらね・・・

 連れの電車の時間は5:13だったけど、まだ時間があったので、それこそカフェに入ることにした。ええええ、最後ですもの、それくらい奢りましょうね(なんか開き直り?)。

 結局カフェじゃなくてケーキ屋さんに入って、私はカフェオレとプチケーキを食べる。うん、やっぱりお菓子はおいしい。

 で、5時に彼を見送った後、晩御飯を買いに行こうと思ったのだけど、近所の店はどこも閉まっていた。ああそうだ。今はイスラム教徒のお食事の時間なんだわ・・・。
 仕方がないので、私は部屋に戻って葉書を書く。階下からテュニジアン・ブリックの匂いがしていた。マルセイユは空気が悪いーと思いながら、頭痛に堪えかねて休む。

 7時頃に部屋を出て、水だけ買って、手持ちのバナナで夕食を済ませる。

 今日も歩いた。マルセイユの町中は空気が悪い。そして、ヨーロッパは乾燥してる。うー、気持ち悪い。

 隣の部屋から、お食事で盛り上がるアラブ人の話し声が聞こえていた。そう、アラブ人ときたら、ラマダーン中は夜に盛り上がるものなのだ。それを聞きながら、いつの間にか私は寝てしまう。

 明日はテュニジアだ。また、このアラブ人の声を聞くんだ・・・・・・

 

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