南仏旅行の記録 マルセイユのクリスマス


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 朝、私はいつもより早く起きて8時には朝食に出かけた。先にも書いたが、ここのユースの朝食時間は8時から8時半なのだ。

 昨日来たらしい客と向かい合わせに食事を摂ったが、例のポーランド人もそして肝心のうちの連れも、8時半になっても降りてこなかった。おいおい、私は構わないが、アナタの電車は10時5分くらいには出るのでは??

 気になって見にいくと、ポーランド人と一緒で、まだ寝ていた。おーいぃぃ。

 でもさすが男だなーと思ったのは、やたらと支度が早かったことだ。いや、私だって肌荒れさえしてなけりゃ、もう少し早くもできるケドさ。

 というわけで、出発の時間には支障なくユースを出たが、バスが来なーい。同じユースからの客も、「クリスマスって言ったって、バスは走ってるだろう?!」とかなり不安げだった。そのおじさんが気になって通りすがりのおばさんに訊いたら「大丈夫、5分も待てば来ますよ」って言われた。・・・そのすぐ後に来たからいいけど、それ以上は待てなかったよ。

 駅に着いて、窓口(ここは入ってすぐにあるから分かりやすい)にてチケットを購入。ニースはよかった。窓口でいちいち「英語喋れる?」とか言われないし。
 連れはその間にフランスフランをイタリアリラに両替に行く。

 お互いのホームに行くので、お世話になりました♪とかいいながらお別れをした。私は自分の電車を待ちながら、さすがにずっと二人でいたので、「マルセイユは一人かーそれも寂しいなぁ、誰か連れが見つかるといいけどなー」とか考えていた。
 周りは、クリスマスに帰省する、もしくは実家から戻る人々でごった返していた。「ニースも終わりだなー、結局4泊もしちゃったなー」とか思いながら、ふと、階段の方を見たら。

 なーんでそこにいるかなぁぁぁ?!

 私の”元”連れが、笑いながらそこに立っていた。
「どーしたのー?」
「いやー。ホームに上がって、どっちの電車かなーと確かめてる間に、目の前で出発された」
 ・・・まあ、よくあることだ。うん。けど、長距離の場合、一本逃すと後がないのでは・・・。
「ここで待つのー?」「うーん、そうだなー」・・・

 ・・・そして結局、彼はマルセイユに戻ることにしたのだった。曰く、「いや、どうせ暇だし。5時くらいのがあるから、それで行けば」。私は大歓迎ですとも。しかしねー、アナタ、マルセイユは一度行ったんでしょー?? はいはい、”元”って字は消しておきましょうねー。

 昨日の新聞で、雨が降るかもって言ってたくらいだから、天気はしっかり曇り模様。連れが言うには「ノートルダムに上るのに晴れてたら暑いよー」ってことだから、まあ雨さえ降らなけりゃちょうどいいのかもしれない。

 マルセイユに着いてまず、駅に荷物を預ける。ああ、そうそう、この駅が憎たらしい面倒な駅ね。今度南仏に来るんだったら、絶対マルセイユ空港なんかには着かないからね!

 で、まずは町中を歩きましょう!ということで、彼の案内に従って、ひたすら進む。でも道は簡単♪ 
 ・・・・しかし、さすがクリスマス、どこも開いてない。ほんとに、開いてない。
 そんな中、一際騒がしい通りを発見した。人があふれている。そして店が大いに開いている。あーれーは、どう見てもアラブ人街だね・・・

 でも、そこしか開いてないし、興味もあったし、それに一人じゃない、男連れだっていうんで、私は入りましたとも。ガイドブックとかには、”危険、入るな”とか書いてあるけど、こんなに活気があったら大丈夫でしょー。

 ふっ、そして思った通り、辺りはアラビア語であふれかえっていた。フランス語とちゃんぽんになっているような感じは、まさにテュニジアと同じ! あうー。そしてテュニジアレストランにテュニジア菓子の店、モロッコ食材の店・・・。けど圧倒的にテュニジアってのが多い。何なんだ、一体・・・。
 私は、南仏はアラブ人が多いとは聞いていたけど、マグリブ諸国の人(モロッコとかアルジェリアとかテュニジアとか)が多い、という感じだったのだ。だから、テュニジアばっかりがこんなにあふれているとは知らなかった。そう、よくよく聞けば、「シュノワ・ハワーリック? ラベース?」(元気か)とかいう、よく聞く日常会話が飛び交っている。

 そして店に入ると、モロッコの伝統的スープ・ハリーラのインスタントとか、アルジェリア料理のとか、テュニジアのハリーサとか、そういうものがあふれているー。すごいー。
 ハリーラは買おうかと思ってしまったけど(大好きだから)、ここで買うことに何の意味もないし、高いしと思ってやめた。

 ふと上を見上げたら、ここにもクリスマスの飾り?とか思ってしまうモノがぶら下がっていた。町中、大抵どの通りにも電光が飾られてるからね。
 なんで、アラブ人街に?と思ったら、それは・・・ラマダーンランプだった(^^;;; いかにも手作りなやつ。テュニジアでは見かけないけど、エジプトとかだと、ラマダーン時期に色とりどりのガラスとかをはめたランプを吊すのだ。けど、そこにぶら下がっていたのは、金属でできたたようには見えなかった。まあ、私の目が悪いから、そう見えただけかもしれないけど、ちゃちーもんだったわ。

 そこで、大家への土産にチョコレートを買い、お昼にピザを食べた。ほんっと、クリスマスはアラブ人の天下だね。

 それから、ノートルダム寺院へ向かった。ノートルダムっていうのは、直訳すると「私たちの婦人」、つまり聖母マリアのことだ。だもんで、この名前を持つ教会はどこにでもある。一番有名なのはパリのやつね。
 今日は風がないから楽だよ、と連れが言った。彼が来たときは風が強くて、逆風にあおられ風と戦いながら上ったそうな。そんな余計な体力、使いたくないわ。

 ほんと、上へ上へと上っていけば、ノートルダムには着く。一番高いところにあるんだから、そりゃそうだ。・・・けど、疲れたーぁ。

あーれーがっ、「ノートルダム・ド・ラ・ガルド」。番人のマリア、守り神のマリアってとこかな。一番てっぺんで金色に輝いているのがマリア像。

さすがに写真を撮るときだけは、晴れてたらよかったと思った。あの金色がさぞかし空の蒼に映えただろうにね。

 ノートルダムの中へ入る。ここは造りが面白い。低い天井の部屋と、その上に高い天井の部屋(メイン)がある。なんか、クリスマスでお祈りに来てる人も多くて、邪魔しちゃ悪いから写真撮れなかった・・・

 一通りぐるっと回って、外の景色も眺めて、「あれがイフ島だねー。けど寒いし高いから行かない」(特に興味もないし)。こんなんばっかし?

 中に小さな展示場があって、そこにはクリスマスらしいお人形が展示されていた。箱庭みたいなのができてて、牛小屋でイエスが生まれてる。周りは極平凡な暮らしの演出。でも、人形の大きさがそれぞれ違うから、なんかあの赤ちゃん大きすぎ。イエスよりでかい・・・とかね。洗濯物のところにだけ風が当たってたり、右と左の風車の回るスピードが違ったり、全てはご愛敬・・??

 そういうのを見た後で、なんかポスターを発見。それによると、あと5分もしたら”何か”が始まる。何かって、何? このなんとかって部屋はどこ? 
 でも、何かあるとしたら、メインの部屋しかないじゃないか。私たちはそこに向かうことにした。
 ・・・パイプオルガンの音が聞こえてくる。ああ、賛美歌が始まるんだ。

 椅子に腰掛けて、じーっとフランス語の賛美歌を聴く。響きが心地よいね。眠ってしまいそう。
 ・・・と思ったら、隣は寝てる?

 司祭だか神父だか、彼が聖書を読み上げてる。人々が唱和する。私はそんなことできないから、黙って光を見ている。蝋燭と、そうじゃない蝋燭を象ったランプ・・・。揺れる光と揺れない光。意識が遠のいていこうとするのを抑えて、周りを見渡す。
 よくよく見ると、さっきは気づかなかったものが見えてきた。天井から吊された、いくつもの船の模型。いくつもいくつも、紐に連なって吊されている。
 そう、ここは「番人のマリア」。昔の人が船の無事を祈って吊したものなんだろう。たくさんの人の心が、ここに集結してる。
 そして、賛美歌と、パイプオルガンと、聖書の唱和・・・・

 しっかり30分以上はそこでそうやって世界に浸っていた。

 けど、実はここの賛美歌はイマイチだった。何かって、マイクがメインの女声しか捕らえてないんだもの。だからね、ハーモニーがイマイチだったのだ。いいけど、気分に浸れたし、パイプオルガン綺麗だったし・・・

 けども、彼の電車の時間が5時半ということで、そろそろ出ないと・・。
 歩きながら、またアラブ人街に入って、彼の今夜の食料調達。私もまたバナナを買う。手軽だから・・・

 で、私の今夜の宿も探す。ユースが開いてるか分からないから、行けなかったのだ。インフォは閉まってるし、電話しようにもカード式の公衆電話しかないし。
 そこから駅に向かいながら、見つけたホテルの値段を訊いていく。ちょっと怖かったけど、アラブ人街でも訊いてみた。すんごい安いところは40とか言ってるし。けど一応訊いてみたら、満室とのことだった。嘘でもそう言うだろうから、別に構わないし、そこに泊まる気はなかったけど。
 それにねー、ホテルも閉まってるところがあるんだよね。なんで、どうして? クリスマスにマルセイユに来る人っていないの??
 時間は5時近くになっていたけど、駅は近づいてるから問題なし。ぐるぐるとホテル探し。ガイドブックによると、安宿が多いとのことだったが、どのレベルの安宿??

 とうとう駅前まで来たとき、時計は5時15分は回っていたと思う。そこで入ったホテルは、比較的安かった。シャワーなしで80FFとか書いてあったかな。ここはアラブ人経営(しかもテュニジア方言喋ってた)だったんだけど、場所が便利なもんで、もうここにしちゃおうと言って私は決めたのだが、連れに向かって、
「で、アナタはどうするの?」。
 時計は20分を過ぎていた。・・・
 それで、結局、彼も泊まることになった。こーゆーっ
 ・・・・予定のない人はいいよねぇぇぇぇ。私もイタリア行きたかったさ。

 けど、実は電車は5:13だったことが判明した。「じゅうさん」と「さんじゅう」だったら、覚え間違えてもおかしくないけどーっ

 駅に荷物を取りに行ってから、食事をしに出かけた。一人だったらうろつくのイヤだったから手持ちで済ませようと思ってたから、なんか嬉しい。

 また旧港のところまで来て、たかいーだのうだうだ言いながら、結局イタリアンパスタの店に入る。だって、値段が安かったんだ。こんな値段でホントにいいの?って思ったくらい、周りの値段と違った・・・。しかも、パスタの種類とソースの種類を選んで組み合わせるタイプで、パスタの種類によって値段が変わるだけ。予定より安くついたので、クリスマスだしね♪とワインも頼む。それでも、他の店で食べるより安かった。ここって、イタリアのチェーン店なのかなぁぁ?

 かなりおいしくいただき、大満足してホテルへ帰る。
 途中すれ違った旅行者以外の人は、ほとんどアラブ人だった。クリスマスの夜はアラブ人しか歩いてないらしい・・・。

 ・・・それで、連れは明日結局、ほんとに朝5時なんかに起きて電車に乗るのか、それとも今日乗れなかった午後5:13分に乗るのか・・?
 ・・・たぶん、午後なんだろうなぁ。起きそうにないもん・・・。ってことは、明日も一人じゃないねー♪

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